月の影 影の海
さてさて、小野不由美至上主義者のあたし
今日は小野不由美先生の本の中で一番初めに読んだ本、十二国記シリーズの「月の影 影の海」をご紹介します
まず、十二国記シリーズですが、この月の影 影の海を読んでいないと世界観がさっぱりわかりません
なぜなら、全く価値観も世界観も考え方も常識も違う世界のお話だからです
なにせ、子どもは母親の腹から生まれない。夫婦が里木という子どもを授けてくれる木にお願いに行って、それを神が聞き受ける(親になる資格があると認める)と木に実がなる。十月十日まって、夫婦がもぎり、一日置いておくと赤ん坊が生まれる…などという世界
そんな独特の常識と世界観に支配されたお話なので、それが全て説明されてるこの本を読まないと、シリーズ的に理解できないことが多いんですよね
それだけ作り込みが凄い…ということでもあるんですが
この、「月の影 影の海」は陽子という1人の女子高生が主人公の物語です
陽子は自分の家でも学校でも優等生を演じ、自分を出すということをしていませんでした
誰に対してもいい子であろうとし、誰に対しても心を完全に開くということをしない…ある意味では孤独な、そして生きづらい選択をしていました
そんなある日、見たこともない格好をした、金髪ロングの男が陽子の前に現れます
その人物は陽子を「主」と呼び、剣を手渡します。と、同時に現れたのは常識からは考えられない大きさをした鳥…いわゆる化け物
金髪の男はそれを妖魔と呼び、渡した剣で戦えと促します
ですが、日常からかけ離れた出来事に対応できるわけもなく、陽子はそれを拒みます
すったもんだの末、その化け物から逃げるためには「あちら」へ逃げるしかないと言われ、無理やりのように訳のわからない世界へと放り出されることになります
逃げた先には金髪の男は見つからず、ただ1人で見知らぬ村を歩き回り、訳のわからぬままに殺されかけたり女郎宿に売られかけたり僅かばかりの荷物を盗まれたり…
そんな中、あいも変わらず妖魔には襲われる
仕方なく戦うことに身体は慣れていき、人に裏切られるたびに心は荒み自分しか信じることができなくなっていく陽子ですが、ある時転機が訪れます
半妖と呼ばれる生き物に行き倒れたところを助けられ、警戒しながらも情報を得、自分がなぜ命を狙われるのか、この世界は一体どういうところなのか、今までなにもわからずにいたことを理解していくことになるのです
そして、金髪の男を探したいのなら隣の国の王に助言を求めるのもいいかもしれないと言われ、半妖を旅のともに隣国を訪ねることを決意するのですが…
この、二人旅のなかで、陽子は今まで自分から失われていた人間としての心、人を信頼する心、そして、ずっと得られていなかった本当の自分らしさを取り戻していくことになるのでした
それらを取り戻した時、そして、自分のことを「主」と呼んだ金髪の男との本当の関係を知った時、陽子の世界は180度転換期を迎えます
陽子の運命は如何に…
この本を読んであたしが一番に思ったこと
それは、「自分らしさ」を持つことが如何に大切か、そして、それが如何にむずかしいことなのか…でした
あたしは、あまり自分らしさというものを持っていません
この本を初めて読んでから長い年月が経ちますが、それは今でも変わっていないと思います
自分らしく決断を下すこと…それがどんなに大切なことなのか…
とても考えさせられる本だと思いますし、深いことを考えるまでもなく、ただファンタジーとして読み流しても十分に読み応えのある面白い物語です
ぜひぜひ、一度お手にとってみてくださいね